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子どもの必要睡眠時間

2024.8.15

■子どもの必要睡眠時間はどのくらい?■

こんにちは。

SOL整形外科の内田です。

このコラムでは、患者さんやそのご家族から寄せられる質問に、整形外科医の視点でお答えしています。

今回のご質問は、睡眠時間について。最近は子どもたちの睡眠時間が短くなっているようですが、みなさんはどのようにお子さんの睡眠を確保していますか。

今回は、睡眠に関する最近の研究も振り返りながら、考えてみたいと思います。

 

質問:

スポーツに塾に、どうしても子どもの睡眠時間が短くなってしまいます。身体に悪いように思うのですが、実際どのような影響があるのか教えてください。

回答:
お子さんの睡眠時間、みなさん悩まれているようでよく質問を受けます。特に成長期は、睡眠を取ることで成長ホルモンの分泌が促進されるなど、睡眠のメリットがとても大きい時期です。睡眠を取らないことのデメリットを理解するとともに、メリットもしっかり取り入れて、生活リズムを作りたいですね。以下に、項目を分けながら説明していきたいと思います。

 

■必要な睡眠時間について■

小学生から中学生までの必要睡眠時間の目安
実は子どもの睡眠不足は世界中で問題になっています。様々な研究が行われていますが、ここではアメリカのNational Sleep Foundationが提案している必要睡眠時間をご紹介します。

1.小学生(6-12歳):

必要な睡眠時間:9-12時間

小学生は成長と発達が急速に進む時期です。

十分な睡眠は身体の成長、脳の発達、免疫機能の維持に不可欠です。

2.中学生(12-15歳):

必要な睡眠時間:8-10時間

中学生は思春期を迎え、身体的・精神的な変化が著しい時期です。

成長ホルモンの分泌が盛んになる夜間の睡眠は特に重要です。

参考資料:

  • National Sleep Foundation. (2015). “National Sleep Foundation Recommends New Sleep Times”. Retrieved from SleepFoundation.org
  • Hirshkowitz, M., Whiton, K., Albert, S. M., Alessi, C., Bruni, O., DonCarlos, L., … & Adams Hillard, P. J. (2015). “National Sleep Foundation’s sleep time duration recommendations: methodology and results summary”. Sleep Health, 1(1), 40-43.

睡眠時間が足りないことで生じると考えられている問題

1.身体的影響:

成長の遅延

睡眠中に分泌される成長ホルモンが不足し、身体の成長が遅れる可能性があります。

特にスポーツをする子どもにとって、筋肉や骨の発達が不十分になることはパフォーマンスに直結します。

免疫力の低下

睡眠不足は免疫システムを弱め、感染症にかかりやすくなります。

スポーツによる疲労が蓄積しやすくなるため、怪我のリスクも増加します。

参考資料:

  • Evans, M. D., Turner, S. M., & Klouda, P. T. (2017). “Sleep and immune function”. Pediatric Clinics, 64(2), 383-399.
  • Taheri, S., Lin, L., Austin, D., Young, T., & Mignot, E. (2004). “Short sleep duration is associated with reduced leptin, elevated ghrelin, and increased body mass index”. PLoS Medicine, 1(3), e62.

 

2.精神的・認知的影響:

集中力と記憶力の低下

睡眠不足は学業成績に直接影響を与えます。

授業中の集中力が低下し、記憶力や理解力が低下します。

これにより、学業成績が低下する可能性があります。

感情の不安定

十分な睡眠を取れないと、イライラや不安感が増し、ストレスがたまりやすくなります。

スポーツにおいてもメンタル面でのパフォーマンスが低下する可能性があります。

参考資料:

  • Curcio, G., Ferrara, M., & De Gennaro, L. (2006). “Sleep loss, learning capacity and academic performance”. Sleep Medicine Reviews, 10(5), 323-337.
  • Dahl, R. E. (1996). “The impact of inadequate sleep on children’s daytime cognitive function”. Seminars in Pediatric Neurology, 3(1), 44-50.

 

3.スポーツパフォーマンスへの影響:

反応時間の遅延

睡眠不足は反応時間を遅らせるため、スポーツにおける俊敏な動きが難しくなります。

例えば、サッカーやバスケットボールなどの瞬時の判断が求められる競技では致命的な影響を及ぼします。

持久力の低下

十分な休息が取れないことで、持久力が低下しやすくなります。

これにより、長時間の試合や練習に耐えられなくなることがあります。

参考資料:

  • Mah, C. D., Mah, K. E., Kezirian, E. J., & Dement, W. C. (2011). “The effects of sleep extension on the athletic performance of collegiate basketball players”. Sleep, 34(7), 943-950.
  • Milewski, M. D., Skaggs, D. L., Bishop, G. A., Pace, J. L., Ibrahim, D. A., Wren, T. A., & Barzdukas, A. (2014). “Chronic lack of sleep is associated with increased sports injuries in adolescent athletes”. Journal of Pediatric Orthopaedics, 34(2), 129-133.

 

科学的に推奨されている対策

ここでご紹介する対策は、睡眠についての基本的な方法論です。

とても地味で、回りくどいようにも見えますが、基本的には生活習慣としてどう睡眠を重要視するか、が大切になってきます。

1.規則正しい生活習慣の確立:

就寝と起床の時間を一定に保つことが重要です。

週末も含めて規則正しい生活リズムを維持することで、体内時計が安定し、質の高い睡眠が得られます。

2.快適な睡眠環境の整備:

静かで暗い、適温な寝室を整えましょう。寝具も適切な硬さや柔らかさを選びましょう。

「思っていたよりも硬い」くらいが、腰などへの負担が小さいと考えられています。

ベッドマットレスは、頭側と足側を時折反転させてあげると長持ちします。

3.就寝前のリラックスタイムの確保:

就寝前の1時間は電子機器の使用を控え、リラックスできる時間を過ごすことが大切です。

例えば、軽いストレッチや読書などが効果的です。

4.バランスの取れた食事と適度な運動:

健康的な食生活と適度な運動は、質の良い睡眠に寄与します。

特に夕食は軽めにし、就寝前の激しい運動は避けるようにします。

日本人の食生活はどうしても夕食偏重になりがちですが、成長期の子どもの栄養は朝昼晩+補食でバランスよく摂取したいものです。

 

子どもたちが健やかに成長し、スポーツで最大限のパフォーマンスを発揮するためには、適切な睡眠が欠かせません。親子で一緒に生活習慣を見直し、健康的な睡眠を確保できるとよいですね。

まずは上記の対策のうち、どれかひとつにトライしてみませんか。

 

 

 

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