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秋のシーズンが受験期と重なってしまう場合の困りごと
2024.9.30こんにちは。
SOL整形外科の内田です。
このコラムでは、患者さんやそのご家族から寄せられる質問に、整形外科医の視点でお答えしています。今回のご質問は受験期とスポーツのシーズンが重なってしまうことに関するお悩みです。できれば、心理的な負担はやわらげてあげたいところですが、どちらも必須ということになると、親御さんの協力が大事になってくると思います。運動を続けてもらうという視点から、少し考えてみましょう。
質問:
小学校6年生の子どもの親です。中学受験に向けて、ラストスパートの時期をむかえているのですが、同時にスポーツも秋のシーズン真っ盛りで、うまく折り合いをつけることができません。スポーツに取り組むお子さんをたくさん見ていらっしゃる先生の立場から、なにかアドバイスを頂けませんか。
回答:
ご質問ありがとうございます。
受験とスポーツシーズン、たしかに重なってきますね。特に秋の週末、土日はしっかり勉強してもらいたいのに週末は試合三昧、という話をよく聞きます。
ここでの問題は、お子さんに負担がかかりすぎる可能性があるということです。なぜなら、子どもたちは自分自身の限界に気が付かないままやるべきことを頑張ってしまうことがあるからです。大人よりもずっと、自分の身体に関する経験値が低いので、どこまで頑張れるかを過剰に見積もってしまいがちなのです。
近くにいる大人の一人として、常々考えていることなのですが、やはり、お子さんとしっかりコミュニケーションを取ることが親御さんの第一の役割だと考えています。疲れすぎていないか、様子をよく観察し、もしも本人からなにか訴えがあれば、真摯に話を聞いてあげてください。
さて、今日はその上で、限られた時間をどう有効に使うか?ということを考えていきたいと思います。これは特に医師だから知っている、という内容ではないかもしれませんが、普段子どもたちを見ている立場として、有効だろうと考えられる事柄をご紹介したいと思います。
大きく分けて、5つのポイントで考えました。
1. スケジュールの管理
運動と勉強を両立するためには、効果的な時間管理が不可欠ですから、まずはスケジュール管理を見直してみましょう。
タイムマネジメント
- 日々のルーティンを確立: お子さんと相談しながら、毎日の時間割を作成し、勉強時間と運動時間を配置しましょう。例えば、学校が終わったらまず1時間勉強、その後に運動を1時間、その後にまた勉強というように、「ブロックタイム」を設定します。
- 優先順位の設定: 重要な試験が近い場合は勉強時間を増やし、それ以外の時期は運動時間を増やすなど、優先順位に応じて調整する柔軟さも持ちましょう。
- なにもしない時間も持つこと: 目的のない自由時間も必ず確保するようにしましょう。これは、長期間ストレスに対応するための大事なコツです。
2. 時間管理の方法をもつ
時間的な効率については、個人差はあれ、時間を区切っていくことが大事だと考えられています。ポモドーロ・テクニックのような、一般的になりつつある方法を取り入れてみるのも一つの手ですね。詳しい方法論は紹介できませんが、一例として挙げておきます。
集中力を高めるテクニック
- ポモドーロ・テクニック: 25分間集中して勉強あるいは運動をし、5分間の休憩を取る方法です。このサイクルを繰り返すことで集中力を維持します。具体的には以下のように進めますが、お子さんでしたらサイクルを2回に減らすなどの工夫が必要かもしれませんね。
- タスクを決める: 最初に、取り組むタスクを具体的に決めます。これは勉強、仕事、家事など、どんな作業でも構いません。
- タイマーを設定する: 25分間に設定します。この25分間を「ポモドーロ」と呼びます。
- 作業に集中する: タイマーが鳴るまで、他のことに気を取られずに作業に集中します。
- 短い休憩を取る: 25分の作業が終わったら、5分間の休憩を取ります。この間にリフレッシュするために軽いストレッチや水分補給を行います。
- 繰り返す: 上記のサイクルを4回繰り返したら、15〜30分の長い休憩を取ります。
- メリハリをつける: 勉強と運動の時間を明確に分けることで、それぞれの時間に集中しやすくなります。
環境の整備
- お子さんと一緒に環境整備: 以下の環境整備を、できるだけお子さんと一緒に行いましょう。
準備を学ぶ良い機会です。今後高校生・大学生・社会人と進んでいく中で、自律を目指す方法でもあるとおもいます。
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- 静かな場所で勉強: 集中できる環境を整え、必要な教材をすぐに取り出せるようにしておきます。
- 運動前の準備: 運動に必要な道具やウェアを前もって準備しておくことで、スムーズに移行できます。
3. 運動の効果的な取り入れ方
部活動や試合がお休みの日は、できるだけ「なにもしない時間」の確保、自由時間の確保をしてあげることが、心理的なプレッシャーのコントロールに有効です。
その上で、体力の維持を考える際には、短時間の運動を取り入れてみるのもいいかもしれません。
お子さんと相談の上、どのように身体を動かしていくか検討してみましょう。
運動の種類と強度
- 短時間の高強度トレーニング(HIIT): ポモドーロ・テクニック同様、こちらも最近良く使われている方法論になります。是非調べてみてください。短時間で息が切れるような運動を組合わせる方法です。15分程度の運動なので、比較的導入しやすいかもしれません。
- 有酸素運動: 30分程度のランニングやサイクリングも、体力維持に効果的です。また、有酸素運動は心理的なストレスを軽減するとも言われています。
日常生活での活動
- 通学時のウォーキングやサイクリング: 通学時にウォーキングやサイクリングを取り入れることで、日常的に運動量を増やすことができます。
- 短い休憩中のストレッチや軽い運動: 勉強の合間に短い休憩を取り、軽いストレッチや体操を行うことで、リフレッシュしながら身体を動かすことができます。
4. バランスの取れた生活習慣
運動と勉強の両立には、全体的な生活習慣の見直しも重要です。ここは親御さんが全面的に協力することができるポイントだろうと思います。
栄養バランスの取れた食事
- エネルギー補給: 運動後には、バランスの取れた食事や補食を摂ることで、エネルギーを補給し、集中力を維持します。
- 健康的な食生活: 野菜、果物、タンパク質、炭水化物をバランスよく摂ることで、全体的な健康状態を保ちます。
十分な休息
- 睡眠の質と量: 成長期の子どもにとって、十分な睡眠は極めて重要です。最低でも8〜10時間の睡眠を確保し、規則正しい生活リズムを維持します。8〜10時間というのは、WHOが推奨している子どもの心身を健康に保つための睡眠時間の目安です。中学生でも、そのくらい必要だと言われています。
5. 親御さんのサポートとコミュニケーション
最後に、心理的な親御さんのサポートについて。子どもがストレスなく勉強と運動を両立できるよう、積極的にサポートしましょう。
励ましと理解
- モチベーションの維持: 子どもが頑張っていることを認める声掛けが大切です。褒めるということではなく、頑張っていることを肯定するようにしましょう。
- 理解と柔軟性: スケジュールに無理が生じた場合は、柔軟に対応し、子どもが無理をしないように配慮します。ここでは、お子さんの声をしっかり拾い上げることが重要になります。休みたい、という言葉が出たら、勇気を持って1日休むことも必要かもしれません。しっかり休むことが翌日の集中に繋がるのならば、急がば回れ、ということです。
まとめ
運動と勉強の両立は難しい課題ですが、計画的な時間管理、効果的な勉強方法、適切な運動の取り入れ方、バランスの取れた生活習慣、そして親御さんのサポートを考えることで、少し具体的に考えることができそうでしょうか。
子どもが心身ともに健康で充実した生活を送れるよう、よくご家族で話し合って、方法を模索してみてください。