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怪我による二次障害を防ぐコツ

2024.12.27

こんにちは。SOL整形外科の内田です。

このコラムでは、患者さんやそのご家族から寄せられる質問に、整形外科医の視点でお答えしています。今回は、お子さんがスポーツや生活の中でよく怪我をする、という相談です。同じ悩みを持っている親御さんも多いのではないでしょうか。一緒に考えてみましょう。

 

 

 

 

質問:

うちの子は走り回るのが大好きで、よく怪我をします。子どもなので元気なのはとても嬉しいことですし、のびのび生活してくれているのは良いのですが、気づくと小さな怪我をしているので、いつか大きな怪我に繋がらないか心配です。なにかアドバイスをいただけますか。

 

 

回答:

お子さんがよく怪我をするとのこと、心配ですね。

身体というのは意外と丈夫なもので、たとえばガラスのコップはテーブルから落ちれば割れてしまうのに、同じ高さからジャンプして着地した場合には怪我をしない人がほとんどなのではないかと思います。

でも、不意に同じ高さから「落ちた」場合はどうでしょう。

もし頭から落ちたら、背中から落ちたら、大きな怪我につながるかもしれませんね。

このように考えると、怪我というのは、お子さんの行動が原因なのではなく、想像を超えるなにかが起こったときに起こるもの、と考えてみてください。

ひとりの人間の生活には、たくさんの他者がいて、たくさんの環境がありますから、時折想像以上の出来事というものは起こるものです。まずは、「怪我を全くしない」ということはないのだ、と考えることも必要かもしれません。

そのうえで、身体の仕組みから、怪我をしやすいお子さんについて、考えていきたいと思います。

 

人には個別の身体領域がある

人は、個別に、快適に思う身体の環境が違います。

隣りにいる人がどこまで近づいたら不快に感じるか、その距離が大きい人ほど「パーソナルスペースが広い」という言い方をすることもあります。

走り回るのが好きで怪我をしやすい子は、身近な環境に対しての恐れが少なく、他者や物体を自分の近くまで寄せることができるタイプが多いのではないでしょうか。冒険的なのですね。

その場合は、小さな怪我を重ねていく中で、少しずつどこまでの距離が安全なのか、身体はどのくらいのことで痛みが生まれるのか、経験値を積んでいくでしょう。

怪我をしている男の子のイラスト

 

ひとつの怪我が、経験の証。

子どもは経験を通して柔軟に成長していきます。

やきもきするかもしれませんが、見守りたいですね。

 

近づくことで「感じる」という練習をしてみる

走り回るのが好きな子は、大きな力や大きな動きを好むことが多いと思います。

良い悪いではなく、生まれ持った心身の性質でもあります。

逆に、小さな力や、小さな声、やわらかいタッチなど、自分の生活の中ではなかなか経験しづらい状況にある、とも言えます。いつも走り回っているので、ゆっくり、という経験が少なくなるのですね。

そう考えると、家での遊びの中で、小さな力で楽しめるものを増やしてみる、というのも楽しく経験値を重ねるきっかけになるのではないかと思います。身体を繊細に使う練習をしてみるのです。

たとえば、風船を膨らませて、親と子と、それぞれの右手でやさしく風船を挟みます。

そのまま、色んな場所を歩いてみる。風船は軟らかいので、やさしい力で押さえていないとうまく歩けませんから、優しい力で何かを感じながら動く、という練習にもなるでしょう。

親御さんもなかなか難しいと思うので、楽しく遊べると思います。

 

飴風船を膨らませる子供のイラスト

 

また、トランプなど、力の調節が必要な道具を使う遊びも面白いでしょう。

トランプを切ったり、混ぜたり、重ねたり、配ったり、そういう動作が小さな感覚を育ててくれます。

親御さんが上手に混ぜる様子を見て、真似したくなったら任せてみてください。

やり方を向こうが聞いてくるまで、黙ってにこにこしているのがコツです。

先にやり方を教えてしまうと、自分で自分の力について試行錯誤する時間が減ってしまいますから、もったいないですね。

トランプで遊ぶ子供達のイラスト

 

トランプや風船だけでなく、日常の家事やお手伝いの中にも繊細に身体を使う機会がたくさん転がっています。

お手伝いをお願いする中で、色々チャレンジしてもらえたらいいですね。

 

いつでも相談できる関係を作る

これはとても大切なことで、怪我をしたときに、親に隠さず知らせる力を育てる、ということでもありますし、親が子どもの身体の様子を観察する習慣を作る、ということにも繋がります。

どこか、怪我してないかな?痛いところはないかな?と、小さいうちから身体の様子について一緒に観察する習慣をつけておくと、いざ大きくなったときに、自分自身で自分の身体に関心を向けて、身体の異常に気づくことができるようになるでしょう。

怪我をしてきたお子さんに、「また怪我をして!」と驚いたり怒ったりするのは逆効果です。

怪我をしたことを親に隠すようになるかもしれませんし、冷静に振り返ることを妨げてしまいます。

「あれーいつぶつけたの?」「どういうときに痛い?」と、相談するように聞いて下さい。

そしてもし、【安静にしていても痛い】ということがあれば、必ず医師の診察を受けてくださいね。

もちろん、小さな怪我でも心配であれば、いつでも医師が相談に乗ります。気軽に受診してください。

 

 

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