■秋の大会に向かう前に、心のコンディショニングも忘れずに■

こんにちは。SOL整形外科の内田です。 このコラムでは、患者さんやそのご家族から寄せられる質問に、整形外科医の視点でお答えしています。

今回のご質問は、秋の大会に向けた心のコンディショニングについて。特に疲労が溜まりやすい夏練明け、お子さんの日々の様子をよく観察してサポートできたらいいですね。

理事長 内田

質問: 中学生の娘を持つ母親です。もうすぐ、秋の大会が始まります。我が子はバスケットボールに取り組んでいるのですが、大会に向けて親としてどのような声かけをしていったらいいでしょうか。あまりプレッシャーをかけたくないのですが。 回答: ご質問ありがとうございます。きっとお子さんは夏休みもずっとバスケットボールに取り組んでいたのでしょう。お子さんが何かに夢中になっている姿は、とても眩しくて応援してあげたくなりますね。もうすぐ秋の大会ということで、練習とは違う緊張感もあると思います。今回は、普段から接する機会の多いスポーツ少年・少女との対話の経験から、心理学的なアプローチを含めた心のコンディショニングの解説をしたいと思います。

心理的なハードルを越えるためのアドバイス

日々の練習の成果を存分に発揮するために、秋の大会へ向けての心の準備をしていきましょう。これをするとしないのとでは、試合に向かう気持ちのモードが変わってきます。ぜひ、お子さんと一緒にこの項目を読んでいただき、話し合ってみてください。 1.目標設定の再評価: 夏の練習で得た成果を振り返り、秋の大会に向けた現実的な目標を一緒に設定しましょう。短期的な目標と長期的な目標を明確にすることで、達成感を感じやすくなります。まずは、短期的な目標として、秋の大会が始まるまでに、どのようなことに取り組みたいか、お子さん自身の気持ちを言語化し整理してみましょう。そこから、秋の大会が終わるまでの期間を通して、どんな自分に変容したいかも一緒に検討してみましょう。 大切なのは、目標通りに全てをこなすことではなく、目的を持って日々を過ごすことです。短期目標は、例えば大会前までに食事を欠かさずとる、1日8時間眠る、ボールの手入れをする、など具体的で小さな一歩にすることを忘れずに。 2.ポジティブな自己対話: お子さんが、自分自身に対して肯定的な言葉をかけることができる環境を整えましょう。1の目標設定の再評価にも関わりますが、小さな一歩を設定することで「今日は少しでも成長できた」「自分はやればできる」といった前向きな言葉が生まれてきます。この言葉を大切にしましょう。不思議なことですが、言葉を発することは気持ちにもつながってくるのです。 ポジティブな言葉が頭に浮かんでくることで、心のハードルを低くするのが目的。親御さんと一緒に、ポジティブな言葉にはどんな言葉があるのか、探してみるのもいいですね。 3.リラクゼーション技術の活用: 試合前の緊張は、交感神経を働かせて、身体も緊張させてしまいます。そうすると、どうしても眠りが浅くなり、疲れがとれません。心と身体のつながりを生かして、深呼吸やストレッチなどを行うと、リラクゼーション効果を期待できます。身体にリラックスしてもらうことで、心も落ち着いてくるのです。朝一番、夜寝る前に深呼吸やストレッチを行う習慣を取り入れることで、ストレスを軽減し、心のバランスを保つことができます。 4.サポートネットワークの強化: 家族や友人、コーチとのコミュニケーションをこれまで以上に大切にしましょう。困ったときには遠慮せずに助けを求められるように、お互いに声を掛け合うことが大切です。人間はコミュニティで生きる生き物なので、周囲の理解とサポートが心理的な安心感をもたらします。まずは、親御さんどうしで、ポジティブな声の掛け合いをしてみましょう。子どもは大人がどう関わり合っているかを見て、社会で自分自身がどう助けを求めていけばいいかを学んでいきます。特に試合前には周囲がライバルに見えてしまうこともあるかもしれません。チームメイトの結束を強めることも大切な心理的安定の基盤です。 5.ポジティブなフィードバックの活用: 練習や試合の後には、良かった点や成長した部分をフィードバックします。ポジティブなフィードバックが自己肯定感を高め、モチベーションを維持する助けとなります。秋の大会期間中は、通常よりもずっと気持ちの緊張度が高いですから、特にこれを意識することが大切です。大会期間中に新たな技術を身につけることは難しいですから、今は大きな課題を課すよりも、できていることに目を向けた方が良いのです。 適度な休養の確保:大会シーズンに向けて練習がハードになることもありますが、定期的な休養を忘れずに取り入れることが大切です。体の疲労回復だけでなく、心のリフレッシュにも繋がります。週に1度は完全なオフの日を作りましょう。できればそのオフの日には、勉強などの課題も最低限にして、自由に心を解放できる時間を持ちましょう。長く集中力を保っていく、大切なコツです。

まとめ

夏の練習を終えて秋の大会シーズンに向けて心理的なハードルを乗り越えるためには、曖昧な「頑張り」ではなく、小さく具体的な実践が重要です。子どもたちはそうとは知らず、どんどん頑張ってしまうことが多いですが、一番近くにいる大人が小さく効果的な実践を促すことで、心の体力が身についていきます。秋の大会に向けて、焦らずリラックスを心がけながら、ポジティブな毎日を過ごしていけるようにしたいですね。

SOL整形外科スポーツクリニック

理事長  内田 繕博